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2020.12.11
コラム
投稿者:木下 水信
現在、新型コロナ感染症の第3波の真っただ中です。感染拡大とそれに伴う重症者数増加が医療をひっ迫する事態となり、残念なことに再び行動制限が呼びかけられるようになりました。ただ現状、街の様子をみると、4月5月の緊急事態宣言のような雰囲気はありません。コロナ疲れというか、気の緩みというか、どこか現実逃避的な感じにも見えます。経済的にもテレワークによる出社制限などが進み、働き方は変わりつつありますが、まだ世の中がガラッと変わるところまで至っていません。年末年始はおそらく帰省や旅行を控えることや企業のお正月休暇を長期にわたって取得させるよう国からの要請などもあって、一旦感染者と重症者が減ることが予想はされますが、その後の経済活動の再開や、また厳寒による風邪の本格流行期と合わせ、第4波が到来することが容易に想像されます。
したがって、しばらく新型コロナ感染症を意識しながら生活をしていくことはまだ長期で必要であることは間違いないでしょう。先の見えない状況がますます不安の助長やコロナ疲れを与え続けることになってしまいそうです。
新型コロナによる新しい生活様式を取りいれることが掲げられていますが、社会がデジタル化していく必要がいま問われています。新しい政権になってデジタル庁も設置されました。デジタル化と言ってもみなさんはスマホやパソコンを使って生活や仕事していて、既にデジタル化されていると感じていると思われますが、真の意味でのデジタル化はまだできていません。
特にこのコロナ禍でそれが顕著に出ています。ご存じの通り、給付金ひとつもらうのも混乱していました。マイナンバーの登録も進んでいない現状があります。また新型コロナ感染者追跡システムCOCOAもなかなか普及が進んでいません。それが国民の選択であれば仕方がないことではありますが、世界的にみれば日本はデジタル分野では後進国となっています。国の強制力や政治体制、国民性などもありますが、このままだと日本は海外のデータによって左右されることはもとより、GAFAが現在躍進しているように、第2のGAFAが躍進して日本人の健康管理もすべて外国に委ねられる状況がやってきます。
健康分野のデジタル化が、このコロナ禍で進むことが考えられています。デジタル化の究極はスマートシティです。現在、国もスーパーシティ構想という新たな法律をつくって自治体での実証実験を推し進めています。スマートシティは、人の生活を大きく変える可能性がある新しいデジタルのコンセプトです。この中心はすべて人間が発するデータ(ライフログ)であり、健診や診療などの医療データはもとより、人が普段はき出す食事や睡眠、運動、ストレス、体温、心拍などのログが中心となり、これがすべてクラウドに集約されます。これらログをAIが解析し、人に行動変容を起こさせる有益な情報を伝えます。またその行動データが蓄積され、さらに解析が進み、ピンポイントで最適な情報を伝える世界がやってきます。これがスマートシティで、食も重要でかかせないライフログのひとつとなります。
食は一日三食を取ることが当たり前で、多くの方はあまり深く考えていませんが、それが病気に大きくかかわっていくことは以前のコラムでもお伝えした通りです。ただその当たり前の情報も大事なログであるにもかかわらず、使用されず捨てられていることにお気づきでしょうか?すごくもったいないお話しです。それをずっとデータとして取り続けることができれば、それだけでも病気の発症予測モデルやリスク軽減モデルがある程度わかります。これに医療データや運動、睡眠など様々なデータが紐づけば、今までにない新しい生活モデルが可能となります。またこれから移動サービスなどの新たなサービスなどが加わると生活が大きく変わってきます。みなさん実感がないでしょうが、数年後にはそういう世界が来ることは事実で、食に関しても今後意識する必要性があります。
みなさんにはまだ大きな未来が残されており、背負っていかなければなりません。食は生産的な要素が強いと思っている方が大多数かと思いますが、デジタル化の波にのっていけば、ヘルスケアのキーパーソンに十分なれるでしょう。そこが新しい食の産業として発展していく可能性があることを私は考えており、まだまだ将来性を感じます。食で始まり食で終わると言っても過言ではありません。ヘルスケアでは食が重要なポジションであることはゆるぎない事実で、医療も食が生活のスタートとしてとらえているのも事実です。
ヘルスケアのデジタル化の始まりは、そういった意味でも食からスタートするかもしれません。食のデジタル化が進めば、今後メインプレヤーとして鍵を握る存在となることが考えられます。冒頭に述べたように、このコロナ禍で、またニューノーマルという時代の中で食に携わる方の意識も変わっていかないといけませんが、変わる方向はある程度見えていますので、そこをフジ産業の従業員の方々が一丸となって、大きく前に進んでいただけることを期待しています。
全4回にわたって医療の視点も取り入れながら、コラムとして掲載させていだき、フジ産業従業員や関係者のみなさまに感謝いたします。御礼申し上げます。
医療法人尚仁会
名古屋ステーションクリニック理事長
1993年近畿大学医学部卒業後、近畿大学医学部付属病院、東北労災病院にて外科医としてのキャリアを積み上げ、1995年国立がんセンター中央病院で癌を専門とする外科医として勤務。
1999年名古屋医療センターで主に消化器外科胃癌の内視鏡技術認定という当時数十人にしか日本にいなかった資格を取得。
2007年医療法人尚仁会名古屋ステーションクリニックを健診専門施設として開設。
2010年医療法人尚仁会名古屋ステーションクリニック理事長に就任。