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食と運動の結びつき
2020.11.27
がんばる仲間たち
投稿者:根本 風花
前編に引き続き、後編では新若獅子寮へ引っ越してからの立ち上げ後、インシーズンでの取り組みにフォーカスしてお届けします。埼玉西武ライオンズ若獅子寮の食事提供と、それに伴い多くの変化がある中で、現場ではどのように対応していったのか、生じた課題なども併せて振り返っていきますので、是非ご一読ください。
インシーズンに入ってから、球団管理栄養士様監修・ご指導のもと、まず行ったことは、提供料理の見直し・品数の追加です。弊社が運営を担当している若獅子寮での食事、1軍ケータリングでの食事提供の内容を全て改め、選手の皆様にとってより良い提供となるように再構築していきました。内容を一新した理由として、これまで提供してきたメニューが、選手の皆様の好みや、よく召し上がるものを中心とした提供内容に終始していたことです。好きなものを好きなだけ召し上がっていただくことも大切ですが、自ら考えて、コンディショニングにとって良いものを選手自身で選択できる環境となるように配慮いたしました。具体的には、これまで人気の高かったメニュー内容は考慮しつつ、球団管理栄養士様ご指導のもと、プロのアスリートが食べるにふさわしい内容に対応し、彩りや調理法、組み合わせについても、修正が必要な内容はその都度変更していきました。これらの改革のコンセプトは「選手自身がコンディションに合わせてセレクトできる」ということでした。
インシーズンにおける提供内容の変更をまとめると以下の通りです。
こちらの内容もすべて、球団管理栄養士様の監修、ご提案、ご指導のもと運営しております。
寮の運営において、一番大きく変化したことは朝食、夕食の「選択メニューの追加」です。
新若獅子寮になってから、定食スタイルに変更となり、インシーズンでは、その定食は必ず食べるベースメニューとなりました。そこから更に、コンディション状態に合わせ、選手の皆様が自由に選択できるよう、追加おかずの選択メニュー提供が開始となりました。
また、選択メニューの提供時には、料理名と併せて栄養マークの掲示をして、「このおかずにはどのような役割があるのか」、「主にどんな栄養素が含まれているのか」が一目でわかるよう、POPの掲示も行いました(本コラム執筆現在も継続中)。こちらは、朝食、夕食のみならず、昼食時も掲示しており、寮生以外の選手の皆様にもご活用いただいております。
この重要な業務に携わっている以上、選手の皆様の摂取量、食意識アップに向け、現場としてもより安全で美味しい、見た目にもこだわる楽しい提供をしていきたいと考えています。
①選択メニュー追加後トレーセット写真 ②選択メニュー提供写真
③食堂入口食札掲示写真
まずは、試合前の食事の変化について。
前編では、主に温度管理や設備、備品の整備についてお話ししました。
インシーズンにおける試合前の食事の大きな変化は、以前に比べ、「格段に提供料理のバリエーションが増えたこと」です。球団管理栄養士様のご提案はもちろん、選手の皆様からの貴重なご意見やご希望をもとに実現することができました。これにより、パフォーマンス向上のための食事のみならず、食本来の楽しみについてもレベルアップ出来たと感じています。
また、ここまでバリエーションを増やせたことの背景には、若獅子寮だからこそ実現可能な環境、システムがありました。それは、「埼玉西武ライオンズ様の施設(球場、ケータリング会場、寮、練習場)がすべて同じ敷地内にある事」です。これにより、寮の昼食と、1軍選手の試合前の食事内容を連動させることが出来ました。新たに別メニューで作るよりは遥かに厨房内の負担も軽減でき、かつ調理法なども工夫しながら実現を図ることができました。ベースにある寮の運営とリンクさせた提供システム、施設環境のメリットが食環境の変化を加速させたと感じます。今後は、より良い提供は何か?を検討するとともに、フジ産業にしかできない提供を考え、より楽しんでいただける食環境を創り上げていきたいと思っています。
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④おかず提供レーン ⑤麺トッピングコーナ
⑥ご飯・カレー・汁物提供レーン ⑦サラダ・副菜提供レーン
⑧サラダ・副菜提供レーン ⑨フルーツ・果汁ジュース提供レーン
⑩パン・甘味コーナー
次に、試合中の補食(ベンチ裏)提供について。
こちらも試合前の補食と同様、バリエーションを増やしての提供を実現することができました。作業工程、人員配置も改善し、以前はたんぱく質系の補食が1~2品だったところから、今では、たんぱく質系、炭水化物系の補食を合わせ、5~6種類と豊富になっています。また、温度管理、機器の整備をした上で、試合中の短い時間の中で、より食べやすく、喫食率を上げる作戦として、「提供料理を一口サイズにすること」を行っています。
どのくらいの大きさが良いか、提供量が適切かは、球団管理栄養士様と都度共有し、より良い提供につとめています。
1軍ケータリング関連の最後は試合後の補食提供について。
こちらは、新体制になり新たに開始となった独自の取り組みです。
提供内容は、お持ち帰り可能な惣菜パンやドリンク類と、予約制のお弁当対応です。
お弁当については、試合前食事と同様、寮の夕食メニューと連動させることで、試合後のリカバリーとしてはかなり理想的な提供が実現できています。また、体調不良などによる急なメニュー変更にも柔軟に対応できるようにしています。
今後も、臨機応変に対応し、ここでしか出来ない若獅子寮の強みを生かしながら、シーズン中の試合を戦い抜く選手の皆様に貢献していければと思っています。
⑪試合後補食(お弁当)提供の ⑫納豆、温泉卵、インスタント提供の様子
⑬予約選手のお弁当:ご飯、麺(うどん)、主菜2種、副菜
これまで、多くの変化に対応してきた現場にも、課題が存在しています。
その一つは、提供料理の味、見た目の統一化です。
「料理名は同じなのに、提供する料理が微妙に違う・・・」
インシーズンには、こんな問題に直面したことがありました。調理する上での匙加減や加熱時間、担当調理師もシフトによって異なる現実があります。会社として一つの事業所を運営する上で、フジ産業にしか出来ない提供について考えてみると、やはり選手の皆様に愛され、親しまれてきた料理や味の「安定感で勝負する」ことだと考えています(野球で例えるなら、、、一発ホームランではなく、ひたすら安打を重ねるといったことでしょうか)。歴史が長いからこそ、いつもの味があり、安全で美味しい、楽しいに加え、他にはない安心感を提供できると思っています。
これを達成するためには、当たり前ですが、誰か1人の力では到底及びません。若獅子寮の現場スタッフには、豊富な経験を積んできた調理師、パート従業員が多く在籍しています。旧若獅子寮のオープン当初から在籍している方もいます。課題を乗り越える為に、調味料などの数値的な調整も必要ですが、調理のプロである調理師、若獅子寮の味を良く知っているパート従業員と共に、皆で協力しながら確立していきたいと考えています。もちろんこれは、事業所だけの問題ではなくて、会社全体にも貢献できることで、価値の高いことだと捉えています。多方面からの意見やアドバイスを素直に、貪欲に聴いて、巻き込んで解決に向け実行していけたらと思っています。
これからオフシーズンに入りますが、こういった側面も少しずつ解決しながら、来シーズン、さらに素晴らしい提供ができるよう日々業務を遂行していきたいと思います。
引っ越しからインシーズンを振り返ると、多くの変化と共に、本当に貴重な経験を沢山積んで参りました。引っ越し後のシーズンでは、リーグ優勝も果たすことが出来、その一助と成り得たことに心から嬉しく思い、そしてそれと共に「より良いものに更に発展させていかなくては!」と感じました。また、2020年後以降のシーズンに向けては、球団様より、栄養情報POPの作成や提供時における栄養指導等、若獅子寮の食堂運営において、新たなご提案もいただくことが出来ました。
このような結果を得られた要因としては、前編に続き、球団管理栄養士様の提供におけるこだわりや、いかにして選手自らが食べられるようになるかといった作戦の積み重ね、そしてそれを日々実行し、協力してくれる現場スタッフが居たからこそ、今回の取り組みに繋がっていると感じています。時には大変なこともありますが、皆で頑張っていることには変わりなく、何かを達成できた時が、より団結力も深まり、自信にもなります。今後とも、関わる全ての関係者様に感謝の気持ちを持ち、常に変化を恐れることなく、「お客様第一」で楽しく仕事を進めていきたいと思っています。
来年(2020年度シーズン)に向けては、課題解決に加えて、楽しみを増やせる食事提供のご提案に力を入れていくこと。本業務に関連する貴重なデータを持続可能な運営に繋がるように形として残していくこと。そして、選手の皆様の喫食データ分析を日常的に行い、定期的に球団様や事業所内にフィードバックしていくこと。以上の取り組みを視野に入れ、ここでしかできない、より価値の高い業務を追求していきたいと考えています。
本コラムは2019年度シーズンの内容になりますので、次回のコラムの機会がありましたら、是非2020年度シーズンの振り返りも行えればと考えています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
2019年入社。CFS事業本部 東京支店所属 管理栄養士
埼玉西武ライオンズ若獅子寮にてファーム選手への
栄養サポート業務に従事。主な業務内容は食事提供、
献立作成、栄養情報POP作成、1軍選手へのケータリング対応など。