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栄養士が取り組むSDGsとは

SDGsとは

持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)を引き継ぎ、2015年9月の国連サミットで採択されたものです。その内容には、2030年までに達成する17の目標とそれぞれの目標を細分化した169のターゲットが示されています。(図1)

SDGsが作られた目的は、貧困、飢餓、感染症、気候変動、資源の枯渇など人類が抱えるいくつかの課題の解決方法を考え、地球で暮らし続けることができるようにするためです。
SDGsは、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを掲げています。SDGsは、すべての人々が取り組むためのものです。世界中のあらゆる国において、また、日本においてもSDGsの取り組みが広がっています。

栄養士は、SDGsに何から取り組んだらいいの?

SDGsの17の目標を見てみると、①貧困をなくそう、②飢餓をゼロに、③すべての人々に健康と福祉を、などを中心とし、栄養士とは、関わりの深い目標が掲げられています。
でも、何から、どのようにしてSDGsに取り組むのか、きっかけをつかめない方も多くいるのではないでしょうか?
東京都栄養士会では、SDGsへ取り組むきっかけをHPに掲載しています。

https://www.tokyo-eiyo.or.jp/nutrition/detail.php?news_id=326 (図2)

その内容を紹介します。
① 貧困をなくそう:所得の差が食の格差につながる、食品ロスをなくそう
② 飢餓をゼロに:健康寿命の延伸に取り組もう
③ 全ての人に健康と福祉を:食支援のチャンスは、いつでもどこでも誰にでも
④ 質の高い教育をみんなに:子どもの時から大人になってもしっかりと食育を
⑤ ジェンダー平等を実現しよう:育児も介護も社会活動も平等に
⑥ 安全な水とトイレを世界中に:日本の水の豊かさをおごらずに節水しよう
⑦ エネルギーをみんなにそしてクリーンに:CO2削減に取り組もう、電気は大切に
⑧ 働きがいも経済成長も:管理栄養士、栄養士の免許を生かそう
⑨ 産業と技術革新の基礎を作ろう:AIとIoTで厨房を進化させよう
⑩ 人や国に不平等をなくそう:多様な人々を受け入れよう
⑪ 住み続けられる街づくりを:地域に根差した栄養ケア・ステーションを増やそう
⑫ つくる責任つかう責任:プラスチック製品を減らそう
⑬ 気候変動に具体的な対策を:地震・水害などの対策を怠らず、JDA-DATの研修を受けよう
⑭ 海の豊かさを守ろう:ゴミの分別、廃油の処理は適切に
⑮ 陸の豊かさも守ろう:できるだけペーパーレスに、再生紙を利用しよう
⑯ 平和と公正をすべての人に:コンプライアンスを守り、管理栄養士、栄養士のプライドをもとう
⑰ パートナーシップで目標を達成しよう:SDGsに理解ある個人や企業と繋がろう
こうして、取り組むきっかけをみると、もうすでに取り組んでいたことや、今日から取り組もうと思えることがあるはずです。まずは、身近な問題のフードロスに取り組んでみては、いかがでしょう。

今、日本のフードロスの現状は

食を扱う職種である管理栄養士、栄養士にとって、フードロスは、最も身近な問題です。
まず、今の日本のフードロスの現状を見ていきましょう。
日本の国内で生産された割合を示す食料自給率は、カロリーベースで、令和元年で38%です。(図3)

昭和40年には73%あったものが、令和元年は38%と減り続けています。つまり、食料を輸入に頼る割合が増え続けています。
それにも関わらずフードロスは、平成30年度で、日本全体で600万トンもあり、内訳は、事業系ロス54%と家庭系ロス46%になっています。(図4)

それを、国民一人当たりに換算すると、年間では47kg、一日では約130g(茶碗1杯分)の食品を捨てています。食料自給率が低いにも関わらず、フードロスの量は多いという大きな矛盾を抱えています。

管理栄養士、栄養士として培った知識をフードロス削減のために

フードロスの理由を図5からみてみると、期限が切れた、買い過ぎた、冷蔵庫に入れたまま保管を忘れた、調理法がわからないなどが上がっています。管理栄養士、栄養士の方々は、日々の業務の中で、これらの対策を行っていることが多いのではないでしょうか?

その管理栄養士、栄養士としての知識をわかりやすくお知らせすることで、フードロスを減らせる可能性があります。
例えば、消費期限と賞味期限の違いの説明を行ってみてはどうでしょう。賞味期限は、「おいしく食べることのできる期限」で、この期限が過ぎたから食べられなくなるわけではないことを、まだ、よく知らない方もいるかもしれません。実は、牛乳も低温殺菌牛乳以外のほとんどの牛乳は賞味期限です。消費者庁が作っているポスター(図6)なども利用し、賞味期限と消費期限の違いを多くの方々に理解してもらいましょう。

また、作り方がわからない方のために、料理レシピなどを紹介するのもいいでしょう。特に、残りものを使ったリメイクレシピや、野菜の皮や茎なども使いきる使い切りレシピなどは、特におすすめです。(図7 ブロッコリーの茎の使い切りレシピ)

また、それを身近な人や職場の人だけにお知らせするのではなく、SNSを通じて発信したり、消費者庁のキッチンが、(図8)フードロスのためのレシピの投稿を受け付けているので、投稿することでより多くの方々に利用してもらえるようになるでしょう。

フードロス削減で、他の目標にも貢献できる

食べ物を捨てることで、一緒にたくさんのものを捨てています。食べ物と一緒に捨てられているものは、その食べ物を作るために使った「水」や「労働」です。また、その食べ物を運ぶのに使った「エネルギー」です。そして、その食べ物の「価値(お金)」や「栄養」も捨てています。食べ物を捨てることは、多くの大切なものを一緒に捨てることになるのです。そして、捨ててゴミとして焼却される時には、「エネルギー」を使い、「二酸化炭素」を発生させています。
フードロスを削減することで、⑥の水、⑦のエネルギー、⑧の経済などにも貢献できます。
まずは、今日から、フードロスでも他のことでも、SDGsにひとつずつでも取り組んでみましょう。

 

 

大場 泉

認定栄養ケア・ステーションパソルキッチン主宰
兼東京ベルエポック製菓調理専門学校非常勤講師
兼東京福祉専門学校非常勤講師

京都女子大学家政学部食物学科卒業。管理栄養士、介護支援専門員。
病院栄養士、調理師養成校教員などを経て、特別養護老人ホームで高齢者の栄養管理に従事。
現在は、認定栄養ケア・ステーションパソルキッチン主宰。
東京ベルエポック製菓調理専門学校、東京福祉専門学校非常勤講師

 

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