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「日本食品標準成分表」の縦と横

1.日本食品標準成分表の縦と横

食品成分表は,食品の成分データの「表」として示されています。食品成分表の「縦」は,食品です。一方,「横」は,食品に含まれる成分(栄養素)等です。 この「縦」と「横」のポイントを理解すると,成分表を活用することに役立ちます。そこで,第2回では,食品成分表の「縦」と「横」についてお話します。

2. 「日本食品標準成分表2020年版(八訂)(以下,成分表2020)(QRコード1)」
および「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年(以下,増補2023)(QRコード2)」の「縦」

QRコード1

QRコード2

 

 

 

2-1.食品群の収載順と食品群の名称

成分表2020および増補2023の「縦」である食品は,18の食品群に区分されています。表1に食品群の名称と食品数などを示しました。18群の内訳と収載順は,植物性食品(1~7群:緑枠),きのこ類(8群:茶色枠),藻類(9群:青枠),動物性食品(10~13群:赤枠),加工食品(14~18群:黄色枠)です。

表1. 成分表2020および増補2023の収載食品数

食品群が,この収載順になったのは,2000年に公表された五訂日本食品標準成分表(五訂成分表)からです。また,五訂成分表では,四訂日本食品標準成分表(四訂成分表)の11群,「獣鳥鯨肉類(読みは,「じゅうちょうげいにくるい」です。読み方が難しく,パソコンなどでの漢字変換は瞬時にはできませんでした)」が,「肉類」に変更されました(図1に肉類の食品群名の変遷を示しました)。この食品群の名称の変遷から,各成分表の公表時点における食品としての鯨の状況が推察されます。

図1.日本食品標準成分表の「肉類」の変遷

成分表2020および増補2023での,食品群の名称変更は,18群の「調理済み流通食品類」です。「調理加工食品類」は,四訂成分表で新たに加わった食品群です。日本食品標準成分表2015年版(七訂)で収載されていた22食品の調理加工食品に加え,市販のそう菜などの料理が追加され,名称が変更されました。
このように,食品成分表は,改訂に伴い食品群の名称や食品群の収載順などが異なっています。

2-2.収載食品と食品名

収載食品は,食品群別に,それぞれ原則として,五十音順に収載されています。表1に食品群の食品数などを示しました。

・収載食品

収載食品は, 「原材料的食品」「加工食品」です。
原材料的食品(例えば,米,魚,野菜など)は,「生」、「乾」など未調理食品が基本です。原材料的食品のうち,食べる時に調理が必要な食品の一部について、「ゆで」、「焼き」等の基本的な調理食品が収載されています。また,原材料的食品が,料理の主材料である刺身、天ぷら等の和食の伝統的な料理、から揚げ、とんかつ等の揚げ物も収載されています。
そこで,栄養計算では,食品成分表の精白米ではなく飯を選択すると,摂取栄養量に近い値を得ることができます。

・食品名と食品検索

原材料的食品は,学術名又は慣用名を採用しています。一方,加工食品は一般に用いられている名称や食品規格基準等の名称を勘案して採用しています。
そのため,検索しにくい食品があります(例えば,「かたくりこ」は,じゃがいもでん粉)。そこで,成分表では,広く用いられている別名が,備考欄に記載されています(例えば,じゃがいもでん粉の備考欄には,別名: ばれいしょ(馬鈴薯)でん粉、かたくり粉 の記載があります)。

図2.食品の検索には備考欄を使いましょう!

3. 「成分表2020」および「増補2023」の「横」

成分表2020および増補2023の横は,食品固有の「食品番号」,「索引番号」,「食品名」に続き,表2に示した項目が収載されています。

・食品番号

食品番号は5桁です。五訂成分表以降は,1度決定した食品番号の変更はしていません。最初の2桁が食品群の番号,3~5桁が食品群内の番号です(図3)

図3.食品番号

五訂成分表以降の成分表で新たに追加された食品は,改訂前の成分表の該当する食品群内の最後の番号の次の番号が,付けられてきました。そのため,成分表の食品番号は,順番になっていない箇所があります。

・検索番号

索引番号は,全ての収載食品に付与されています。それは,五訂成分表以降の新たに追加された食品が、五十音順などの成分表の収載順とは異なる食品番号が付されているためです。また,一部の食品では,名称や分類を変更したため、収載順と食品番号とが一致しなくなっているためです。これらのことから,成分表の食品の検索を容易にするために,食品成分表の全食品について通し番号を加え,これを索引番号としています。

・収載成分項目と単位

表2に成分表の横,収載成分項目等と単位を記載しました。gで収載されている成分は緑,mgは青,μgは赤です。1g=1000mg,1mg=1000μgなので,栄養計算結果には,単位を記載することの大切さがわかります。

表2.食品成分表の「横」,収載成分項目等と単位

・廃棄率

廃棄率は,普通の食習慣で廃棄される部分(成分表策定時に判断された部分)を食品全体あるいは購入形態に対する質量(重さ)の割合(%)で示した値です(1式)。

成分表の廃棄率の根拠となる「廃棄した廃棄部位」は,備考欄に記載してあります。
それは,給食施設で廃棄する部位と同じですか。供食施設で常用する食材1個の大きさは,成分表と同じでしょうか。廃棄率の大小は使用する食材の質量に影響します。そこで,常用する生鮮食品(例えば,人参,じゃがいも,玉ねぎ,キャベツなど)は,廃棄率調査を行い,その値を利用することをお勧めします。

・食塩相当量

食塩相当量は、成分表2020のナトリウム量に「2.54」 を乗じて算出した値です。
ナトリウム量に乗じる2.54は、食塩(NaCl)を構成するナトリウム(Na)の原子量(22.989770)と塩素(Cl)の原子量(35.453)から算出したものです(2式)。

食品のナトリウム量は,食塩に由来するナトリウムだけでなく,原材料となる生物に含まれるナトリウムイオン、グルタミン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等に由来するナトリウムも含まれています。

・栄養計算にはナトリウム量よりも食塩相当量を使うことをお勧めします

成分表のナトリウム量は,大きい位から3桁目を四捨五入し有効数字2桁で収載されています。一方,成分表の食塩相当量は,四捨五入する前のナトリウム量に「2.54」を乗じて計算し,少数第2位を四捨五入したものです。そのため,食塩相当量の方が分析値とのズレは小さくなっています。

4.おわりに

食品成分表の「縦」と「横」について,実務で役立つ情報をお伝えしました。QRコードを利用して,文部科学省の成分表をぜひご覧ください。
また,お手元には,あなたにとって使いやすい書籍の食品成分表を置いておきましょう。気になる食品について,見てみると,きっと,新しい発見があると思います。

 

渡邊 智子(わたなべ ともこ)
東京栄養食糧専門学校校長。博士(医学)。

千葉県立衛生短期大学、千葉県立保健医療大学、淑徳大学を経て現職。
千葉県立保健医療大学名誉教授、千葉県学校保健学会理事長、産業栄養指導者会会長。

文部科学省による日本食品標準成分表の策定に食品成分委員会委員等として30年にわたり携わり、成分表活用の研究・提言を行なう。千葉県食育推進県民協議会委員として千葉県の食育ツール(グー・パー食生活ガイドブック等)の開発・普及も行なっている。
著書に「食事設計と栄養・調理」(南江堂)。ちば型食生活実践ガイドブック(千葉県)。『これだけは知っておきたい!「食品成分表」と「栄養計算」のきほん』(講談社)ほか。現在,「女子栄養大出版部WEBマガ「食品成分表」連載中。栄養計算・栄養管理ソフト「EIBUN」((株)コーエイコンピューターシステム)の監修。

 

 

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