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心に残る料理
2023.01.13
コラム
投稿者:浜内 千波
栄養士さんはとにかく忙しい!気が付けばもうこんな時間!と毎日のように時間との闘いとよく伺います。また調理師さんや管理栄養士さん、病院や学校の組織の間に挟まってとても気苦労も多い仕事、立場だともお察ししています。
そんな中で自分自身もアップデートしていかないといけませんから、時間はいくらあっても足りません。しかし時間が足りないことを理由に流されてしまっていると、栄養や健康の情報は日々進化していますから、気を付けていないとあっという間に取り残されてしまいます。
何の仕事も同じですが、勉強して経験を積まないと前に進む事はできません。自分のいる環境や自分自身を客観的に見れない状態になってしまっています。私も絶えず色々な方向から見るようにしていますが、漏れていることも沢山あります。また料理そのものも変わってきているように感じます。
今は多くの料理がYouTubeで流れたり、TikTokなどで流行が作られたりとしていますが、料理の流れが少し違った方向へ変化しているように思われてなりません。料理がイベント化してきているように思います。
映える料理、インパクト重視の料理、ファッション的、ファストファッション的な料理、また時短・簡単だけの料理と、その場限りの料理が多くなっているように思います。一見おいしそうですが、栄養は?塩分は?脂肪は?バランスは?と疑問に思われる料理がとても人気を博しているように思われます。
人にとって、これらの料理の後に残ることは何でしょう。何が本当で本来の味なのか材料なのか分からないような料理では、次の世代に繋げることを考えると、どうかと思ってしまいます。こうした時代に栄養士さんは何を大事にしなければならないのか、この際じっくりと考える必要があります。
栄養士さんが作る料理は美味しそうに見えない、病院食ぽい、病人ではないのにとか、未だにそう思われていることも事実として受け取り、先ずその部分をしっかり払拭しなければいけないと思います。学生時代から料理をあまりされなかったり、家庭でも手伝ったりしていなかったりして、調理の技術が少し遅れている方も多いと思いますので、ぜひ技術を身に着けていただき、本来の食材の味、基本となる作り方を知っていただく事が何より近道になるのではないでしょうか。
そして、おいしさへの追求はとても大切です。美味しさの分かる舌を作り、それを感じ取れるように日々の生活の中で訓練をし、皆さんで共有できる時間を作ることも大事だと思います。私も色々な業態の栄養士さんを拝見していますが、皆さん自身に満ち溢れています。しかし、いざ料理を作ってみてとなると急に全員の方が消極的になっている現実を見てきています。仕事として栄養士である前に、おいしい料理を作れることが先ず必要とされます。
お恥ずかしい話ですが、かつて私はシェフの方と仕事をするのがとても嫌でした。というのも本来のイタリアンの味とは、フレンチの味とは、懐石料理の味とは、と語れる自信がなかったからです。ですから、いつまで経っても見て見ぬふりをしていましたが、解決がつかずなかなか胸を張って取り組むことができませんでした。。しっかりと基礎を学び、シェフが持っていない所が私にはあると確信を持つことにより、それからはジャンルを問わずシェフや料理人さんとお会いしても怖く感じなくなりました。
もちろんシェフや料理人さんはプロですから、極められて素晴らしく尊敬するところが沢山あります。今も私は勉強中で、自信を持っていいところと弱い部分をしっかりと把握しながら、毎日の仕事に向かっています。
味付けの基礎、組み合わせの理由などを理解して解体し、改めて積み上げることがとても大切です。そして新たに自分流に積み上げることができると、より前向きになり、自信にも繋がると思いますね。
また、今はただ腕を磨けばよいということではなく、プレゼンテーションをすることがとても必要な時代になりました。そのためには日ごろから相手に信頼される人間になれるような行動を心がけ、色々な角度から食事全般を見ていくことが大事になります。
また、料理の世界も多岐に渡って仕事が分担化してきました。一つのジャンルのスペシャリストが普通になってきていますので、チャンスはあると思いますね。電子レンジ料理研究科、ベトナム料理家、ベジタブル料理研究家、スポーツ栄養士と、自分の得意とする所をしっかりと見つけ、そしてそれを伸ばして強いものにしていく。
確かにそれも一つの手かもしれませんが、料理はベースが全てある程度同じで、ジャンルが違うだけのような気がします。ですので、栄養士さんも料理のベースを先ずは磨くこと。そしてそれが出来たら、学んできた栄養をプラスすればもっともっと強くなる事が出来ると思います。
厳しい事を申し上げましたが、ぜひ今からでも工夫をしてステップアップしましよう!
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料理研究家 浜内千波(はまうちちなみ)
昭和30年生まれ。徳島県海陽町出身。大学卒業後、OLを経て岡松料理研究所へ入所。その後ファミリークッキングスクールを開校。雑誌や書籍をはじめ、テレビ、ラジオ、講演会、料理イベントで活躍。食材の味を生かした料理、野菜料理は特に定評がある