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給食でたどる学校の一年

 

前回は、「食」を通して子どもたちに寄り添うことの楽しさや、学校給食における責任についてお話させて頂きました。

今回は給食を通して、歳時を伝えていくこと、また、子どもたちが行事など学校生活を共に楽しめること、
そして「豊かさ」につながるための食育についてお話ししたいと思います。

 

給食・食育と歳時

この仕事に就いて歳時を伝える様になり、暦をとても気にするようになりました。
歳時というのは7月の七夕、9月の重陽の節句とお月見など、1年を通して昔から執り行われてきた行事です。お正月のおせち料理やお雑煮というように、歳時には食がつきものです。集団給食なので使える食材や調理法など限度はありますが、給食だけでなく給食時間での放送や「おたより」を使い、食べられてきた料理だけでなく歳時の意味や由来など可能な限り伝えてきました。平日しか実施しない学校給食では歳時によっては暦と前後することもままあり、5月5日の「端午の節句」などは近い日程で「中華おこわ」「中華ちまき」などを提供しました。お正月もタイミングは合いませんが、七草のパックだけは八百屋さんにお願いして、冬休み明けの給食で紹介して教室で実物を並べて見てもらいました。

家庭によっては薄れつつある歳時ですが、小学校は6年間あるので6回重ねると子どもたちも知らない間に身に付きます。
学校給食の特権だと感じています。

 

歳時の献立

3月のひなまつりには五目ずしを提供して、菱餅かデザート代わりにひなあられです。しかし、ひなあられを小袋で提供するには費用もそこそこにかかり、食べる時間も要します。そこで、ひなあられを飾りに使ったデザートを考え、行事を盛り上げ、あられの存在も伝えることが出来ました。

11月の勤労感謝の日(新嘗祭)に五穀豊穣を意味して五穀のご飯を提供します。それとともに校内テレビを通じて料理を作ってくれる調理員さん、食材を育ててくださる地域の生産者さんに直接お話をしていただいていました。私が伝えることが有効な場合、子ども同士が伝えあうことが有効な場合、それぞれの立場の人が直接伝えることが有効な場合とパターンはいろいろあると思っています。それをうまくコントロールすることも私の仕事だと考え実践していました。

 

沖縄やオリンピックに目を向けて

日本の歳時は大切なことの一つですが、それ以外にも、一年を通じて伝えたいことがあります。歳時ではないのですが、6月は沖縄の戦争による悲劇があったことから、毎年沖縄料理を提供して、注目を促して来ました。
また1月にある学校給食週間では、お弁当を持ってこれない子どもたちに向けて施された給食の発祥にちなんで、おにぎりを中心とした献立です。

4年ごとになりますがオリンピックの時にも、オリンピックにちなんだ給食を取り組みます。特に東京オリンピックでは、国際理解の対象として学校が担当していたチェコ共和国に親しむ給食も行いました。堅めのパンを玉子に浸し、煮林檎とミルフィーユ状に重ね、表面にはパン粉などをあしらい焼き上げた、チェコ風リンゴパンプディングです。正直に言えば、そもそもチェコの料理はさっぱり想像が着きませんでした。そこで調理員さんと一緒にチェコの大使館を訪れ、大使館のシェフから教わることで実現できました。

 

 

学校行事と給食

教育活動の中の給食ですから、学校行事に沿った料理の提供もとても大切です。入学式・進級や卒業式にはお祝いの献立です。卒業式ではもちろんお赤飯はつきものですが、海老フライ・魚の照り焼き・けんちん汁と共に提供します。春の最初の給食では、よく桜をモチーフにした献立にしました。桜の色合いをあしらい、香りも添えたシュガートースト。桜の塩漬けと砂糖・バターで焼き上げます。全学年の進級をお祝いする意味です。

 

 

開校記念日には学校の誕生日ということで、お赤飯と鯛のかまの塩焼きです。骨だらけのかまですが楽しく黙々と食べていました。鯛のかまにある「鯛の鯛」といわれる魚の形の骨を探すためです。低学年は中々うまく探せませんが3年生以上は得意になってみつけます。そして家に持ち帰ります。魚には骨があって当たり前と自然に身についていきます。そして骨がある魚でも、おいしい魚として食べられます。愛媛県の愛南町、鯛の養殖で有名なところですが、5年生の社会科で漁業の学習から繋がったことで実現できました。どんなものでも出会いはとても大切なものだと実感しています。

 

 

 

給食で応援する運動会

そして、学校行事の大きなものが運動会です。保護者や地域に発表するために、一ヶ月ほど練習を重ねて挑みます。この時期には、十分に筋肉が休まる様に早生みかんなど、ビタミンの多い給食を心がけます。また、運動会を盛り上げるために、各学年の演目や出し物に合わせて、その学年にだけ特別な料理を提供していました。
例えば2年生の大玉送りでは、カットした後に再び丸く玉に整え、リボンで結んでメロンを提供します。

一方、3・4年生は表現で「ソーラン節」を演じます。ソーラン節といえば北海道、ある年の特別メニューは鮭を前面に出したおにぎりの「北海ごはん」。ある年では、ソーラン節…海…魚…ニシン…、デザート系も子どもたちは喜ぶので焼き魚以外でも表現したい…。
海と大漁をイメージし、パットの海に舟に見立てたフルーツ、豊漁をミニ鯛焼きであしらいました。子どもたちは大喜び、運動会の実施に勢いをつけることが出来ます。そのためには、調理員さんと何度も話し合いアイデアを出し合い実現していきます。料理を考案するのも中々苦労があり、普段使わない材料を揃えるのも大変で、さらに通常の給食にプラスして提供なので、私も給食室も大忙しです。しかし、子どもたちの驚き喜ぶ顔を想像して考えるのはとても楽しいものでした。これらのことは豊かな食となり生活に豊かさをもたらしていくと考えています。

 

 

 

豊かさのための、給食・食育

「食」は、「生きる」上で欠かせないものです。この「生きる」は、「生存する」という意味と「豊かな人生を送る」という二つの意味があり、どちらも私たちが生涯かかわる大切な視点だと考えています。

かつての栄養指導では「バランよく食べる・マナー良く食べる」指導が中心で、それ以外の面では「食」を軽く考えてしまいそうな風潮も感じられました。しかし2005年の食育基本法の制定の後押しもあり、「食」を様々な方向から様々な形で幅広く伝えていく「食育」の考え方に変わってきたと思います。
豊かな「食」は私たちの人生を豊かにしてくれます。ですから学校給食に関わる者は、豊かな「給食・食育」で、子どもたちの人生を楽しく豊かにすることが大切だと思います。

 

 

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