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食と運動の結びつき

今回は、「食と運動の結びつき」について医学的な見地を踏まえて語らせていただきたいと思います。日本の医療は病気になった患者を治療する、いわゆる治療偏重主義な世界です。したがって、あまり予防・未病には興味を示していない医師が多いのも事実です。その理由は保険制度が出来高払い制になっていて、予防・未病を行ったとしてもあまり実入りが少ないからです。‟薬漬けの治療“と言わるのもその制度が原因とされています。高齢化社会や国家財政逼迫で医療費削減が叫ばれるなか、正直ナンセンスな状況となっています。

ただこのコロナ禍で、いま医療も治療から予防・未病へと大きく変わる節目にきています。

 

 

テレワークの弊害

さて、コロナ禍による新しい生活様式の導入を余儀なくされたことにより、一人当たりの運動量はかなり減っています。特にテレワークは人工的な引きこもりをつくっているだけと医療の専門家からは揶揄されており、実際に運動不足による生活習慣病予備軍の増加や悪化が顕著に認められ、またメンタルヘルス不調を訴える方も多くなっています。

マスコミはテレワークなどをニューノーマルとしてもてはやしていますが、現実にはなかなか表に出てこないような問題もあります。いまのままではコロナで助かっても、他の病気で亡くなる方が増えるのではないかと予想されます。さらにコロナの影響で医療機関への受診控えも増えており、負のスパイラルに陥る可能性もあります。

 

「どうやって体を動かすか?」ということをコロナ禍のなかで試行錯誤されていますが、いまのところ野外での密にならない運動が一番かと思います。室内での多人数での運動はやはり難しいのが現実でしょう。ただ運動だけでは解決されるわけではなく、良質な栄養の摂取やバランスの取れた食事が大事になってきます。

したがって健康を考える上で、食と運動は密接に結びついているのは言うまでもありません。ただ食事・運動療法とよく我々が言いますが、なかなか両方を効果的に実践することも難しいです。特に誰からも介入されずに単独で行うことはさらに難しいです。

 

運動が死亡率を下げる?

運動することによる科学的データとして、アメリカの著名な論文「Lancet (2012;380:219-29)で次のようにデータが掲載されています。運動不足を解消することによって、心筋梗塞で死亡する確率が10.6%減少、糖尿病で死亡する確率が12.3%減少、女性が乳がんで死亡する確率が16.1%減少、大腸がんで死亡する確率が17.8%減少、すべての理由で死亡する確率が16.1%減少する、すなわち運動するだけでかなりの死亡抑制効果および発症抑制効果が認められています。生活習慣病、特にコロナ禍における行動制限や巣ごもりではいかに運動が大事だということがここからもよくわかります。

さらにここに食事という要素を加えることによって、相加効果ではなく、相乗効果が得られることが期待されます。逆に運動をやり始めたことで食事や飲酒量が増え、体重増となる方もいます。身近な例でいうと、テレビCMでライザップという食と運動でスマートな体をつくるコマーシャルがよく放映されていました。私の周囲でも入会して見事にダイエットに成功した方がいますが、辞めるとすぐに戻ってしまいました。プログラム終了後の単独での継続が難しいからです。やはり継続は力なり、運動はまさにこれにつきます。継続させるアプローチも大切です。

 

高齢者の課題は更に深刻

高齢者のフレイル対策ですが、コロナ禍で何が問題になっているかというと、極度の外出制限で筋力低下、すなわち運動不足なった結果、食欲がなくなり、さらに筋力低下となる負のスパイラルに陥入り、最悪寝たきりになることが問題となっています。現在国をあげて対策が始まっていますが、このコロナ禍で、また最近の感染再拡大で有効な対策が取りづらくなっています。高齢者に対しては、食だけを指導しても駄目で、運動も一緒に指導を行わなわなければなりません。高齢者に対しては、皆さんは食のプロですが、運動も理解しながら指導していかなければなりません。特に老人はすぐに筋力低下を起こし寝たきりになるので、できるだけ食、特に多くの「タンパク質」を取らせ、適度な運動をさせて筋力の低下を防ぐことを行わないといけません。

 

食の未来へ

今後は誰もが食と運動の効果的な教育を受ける必要があります。すべての世代に食育と運動育が疾病予防の観点からも必要です。ただ普遍的に行うとしても難しい問題があります。糖尿病や高血圧、がんで代表される生活習慣病は、最初はほとんど自覚症状がなく進行してから発見されるからです。それが沈黙の病気と言われる所以です。また老化もゆっくり進行するためなかなか自覚として表れにくいことが挙げられます。ですから日頃の行動が必要なのですが、これを継続的かつ客観的なモニタリングによる病気の予見を行い、悪化する前の人への介入が必要となります。

 

これからは一辺倒あるいは一方向的な食事・運動の支援ではなく、食も運動も「紙とハンコとFAXから脱却」して、デジタルの世界へもっていく必要があります。食と運動の結びつきは、今後実現するためにデジタル化が必要になると思います。それが進むとスマートヘルスからスマートシティへとつながります。これが治療偏重から予防未病への医療にシフトするきっかけとなるかもしれません。次回はそのデジタルを用いた「食と健康の未来」を語って最後として締めくくりたいと思います。

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