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これからの時代の栄養士に求められるSDGs ― 意識を身近に ―
2023.03.10
コラム
投稿者:浜内 千波
「私は職人です。」
この言葉はある番組で秋元康さんが仰っておられ、なるほどと思いました。秋元さんは誰もが認めるプロデューサーとして活躍されておられますが、それは肩書であって、ご自分で何を作り、何を伝えるのかをいつも考えておられるからこそ、そのように言われたのかなと思いました。直接演技をする役者でも、唄を歌う歌手でもアーティストでもなく、楽曲を作って歌手の方に歌っていただき、セリフを作って女優に口にしていただく、それらを陰で支える職人であると思いましたね。しかもそれで皆さんに感動まで与えるなんて。
よく“職人”というと、寿司を握る方は寿司職人、菓子を作られる方は菓子職人、家具を作られる方は家具職人と、ごく普通にそう言われる方も多いのですから、私もある意味、料理に携わる職人なのかなと思いました。皆さんも同じことかもしれませんね。
人間、何を作り、何を届けるのかが重要であって、表に立つ、立たないとかは関係ないと思います。ましてや肩書などは、後から付いてくるものだと思います。
特別な才能がある方は別ですが、ほとんどの方は努力、経験を積むことによって、他の方からも認められ、自分でも自信を持てるようになるのは皆共通していることだと思います。
皆さんも、自分が職人であることを意識してください。そして、ぜひ職人としての技を持ってください。そのためには勉強も必要になりますし、今やっている事を何回も何回も繰り返しながら、狂いのない職人の技にしていかなければなりません。その先に人を感動させ、光る職人技もあるのだと思います。
そんなところまで追求しなくてもいいのでは?と思っている方が居るとすれば、その方は職人とは言えませんね。せいぜい肩書を前に押し出して、それを盾にして行くしかないと思います。
世の中には、把握できないほどの肩書が沢山あります。なるほどと理解して納得できる職人に至っていないような世界も多いですよね。料理を仕事にしているゾーンだけでも、色々わからない肩書がぐんと近年増えました。
料理研究家から始まり、料理家、料理愛好家、料理Youtuber、ジャンル別(エスニック、野菜、オートミール、雑穀…)研究家、フードスタイリストなどなど続々と増えてきましたね。一般の方から見たら、違いの理解に苦しむと思います。
そんな今だからこそ、肩書よりも何よりも中身であると最近つくづく思うようになりました。
自分が何をしたいのか、何を伝えたいのか、そしてお伝えする相手がどのようになって欲しいのかを考えて、自分に出来る事はあるのか、どのようにすればそれを作り上げる事が出来るのかを考える事が、肩書よりも、仕事の上では大事であると思います。
日々の仕事に追われ、それをこなすのが精一杯の毎日になっていると思いますが、時には自分のやっている仕事や思いを整理し、優先順位をつけて、少しでも時間を効率よく見つけ、色々な物や人を見てみてください。やろうとしている事が本物かどうかを考えて、それに向けて修正出来るようになればいいと思います。
考えを整理して心に余裕を持てば、自分の気持ちにも反映できますし、時間を作る事にも余裕が出来るようになると思います。
昨日、今日やっている事は必ず明日に繋がります。今日は少し、また明日はもう少しと、少しずつでも繋げられる自分でありたいと誰しもが思っているはずですよね。周りの空気を良くすることも大切です。それは会社全体、上司の仕事でもありますが、自分でもどうしたらいいか素直に受け止め、向き合い、次に繋げていけるようにしなければいけませんね。そのためには、ますます進むネット社会ですが、一人一人のコミュニケーションを大切にし、どのようにすれば上手く行くのかを話し合い、確認をしながら進めていくことも、現代の職人の技だと私は思います。
4回にわたり色々と皆さんにお伝えして参りましたが、私も一栄養士から始まりました。そして縁あって今の仕事に就いておりますが、私自身が手を動かして新たなモノを作り、新たな考えを人に伝える、私しかできない職人技を持ちたいと思っています。
そして、世の中の一人でも多くの方が食べる事の大切さ、食材や素材の持つ力を再確認していただき、疲れた体を元気に戻し、毎日のストレスに負けない、明日への活力に繋がる食事の作り方をご案内できるように、技に磨きをかけて行きたいと思います。
私自身も職人として、技を磨き自分のものにして世の中に貢献できるように、皆さんとともに頑張っていけたらと願って、終わりの言葉にしたいと思います。
ここまでお読みになっていただき、有り難うございました。
料理研究家 浜内千波(はまうちちなみ)
昭和30年生まれ。徳島県海陽町出身。大学卒業後、OLを経て岡松料理研究所へ入所。その後ファミリークッキングスクールを開校。雑誌や書籍をはじめ、テレビ、ラジオ、講演会、料理イベントで活躍。食材の味を生かした料理、野菜料理は特に定評がある