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介護保険制度でのリハビリ、栄養、口腔の連携推進など、多職種連携の方向性について

介護報酬改定に見る「個別ケア」への方向性

21年度介護報酬改定では、「在宅重視」の方向性が一層強化されました。とはいえ、自宅という「場所」へのこだわりではありません。いまや高齢者にとっての住まいの選択肢は多様です。暮らす場所はどこであっても「在宅に近い生活ができる」こと。それが今日の介護保険が重視する価値の一つです。
つまり在宅重視とは、集団・画一的ケアから「個別ケア」への転換を意味しています。

では介護報酬の加算を例にみていきましょう。デイサービスやデイケア(以下「デイ」という)では、入浴介助加算Ⅱが新設され、利用者が在宅で入浴できるよう、デイと多職種が連携します。特養・老健・介護医療院には自立支援促進加算が新設されました。これは利用者の重度化・寝たきり防止に向けて、リハビリ等の多職種が取組むものです。とりわけ食事について国は、次の例を示しました。

・居室外で普通の椅子を用いる等自宅におけるこれまでの暮らしを維持できるようにする
・食事の時間や嗜好等への対応は画一的ではなく個人の習慣や希望を尊重する

近年、施設で車いすに座ったまま食事をとる光景は少なくなったとはいえ、すべて解消されたわけではありません。車いすの主な使用目的は移動です。家で座るなら多くの場合は椅子です。家での食事は自分や家族の「好み」のものを摂ります。これから目指す方向性は、場所によって型に合わせた生活やケアを受けることではありません。「在宅に近い生活」、つまり集団のなかでも一人ひとりが尊重されることに価値が置かれます。

食事に関わる「個別ケア」と科学的介護への取組み

個別対応は、その人を知ろうとすることから始まります。好きなもの、苦手なもの。季節の行事や祝いごとにまつわる食事には、暮らした地域や家族の文化があらわれ、心に残るエピソードもあります。丁寧に「聴く」ことは、一人の人を尊重することに繋がります。

さて、得た情報をどう個別的ケアに繋げられるか。それは聴いた人の想像力と配慮にかかってきます。例えば「九州出身」だと聞いたら何を想像しますか。かつてシュガーロードがあった九州は、他の地域に比べて砂糖をふんだんに使う料理が多いようです。幼い頃に馴染んだ味は、現在の好みに影響します。出身地により好みの味付けを意図して確認することもできます。一方で疾病により、好みが変化することもあります。過去から現在までの情報、そして今後想定される変化も視野に入れます。

個別ケアの実現には、科学的な介護との調和、多職種連携は欠かせません。昼夜逆転がある方の場合、日中ぼんやりして食事は進まず、誤嚥のリスクが生じやすくなります。口腔機能の低下や胃腸障害や脱水ももちろん関連します。低栄養となれば意欲や活動性は低下し、リハビリテーションの効果は薄れる恐れがあります。つまり生活行為は互いに影響しあうため、どれか一つだけではなく、総合的に取組むことで好循環サイクルに繋げることができます。21年度介護報酬改定で一層の多職種連携が評価された意義が納得できます。しかし、対応の限界もあります。

例えば、健康管理の基本として施設では体温・血圧や心拍等のバイタルチェック、栄養管理と体重測定はルーティン化されていますが、自宅のすべての利用者に対して行う仕組みはありません。口腔機能の重要性を考慮すれば本来、バイタルチェックを行うかのごとく口腔内の確認も不可欠です。口の中を見れば義歯の不適合、口内炎、口臭や舌苔等の口腔内のトラブルをはじめ、胃腸の荒れ、脱水、嚥下機能障害等、全身のさまざまな異変を知る手がかりを得ることもできます。とはいえ、歯科医師、歯科衛生士がそれを行うには物理的に限界があります。つまり、日常的にかかわる職種がみるべきポイントを知り、しかるべきタイミングで歯科に繋げる、そういう多職種連携の方法が求められています。

食事をめぐる個別ケアには、科学的な介護との調和が欠かせません。その実現に向けた取組みは、一朝一夕とはいかないかもしれませんが、これから一人ひとりが尊重される在宅に近い暮らしに着実に近づいていくでしょう。

 

さて、このたびフジ産業株式会社様よりケアマネジメントの観点から4回の連載の機会をいただきましたが、本稿で最終回となりました。高齢者のケアと食について、皆さまと一緒に考える機会をいただき、ありがとうございました。感謝の気持ちを抱きつつ筆を擱かせていただきます。

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