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栄養ケア・マネジメントや健康経営でのSDGs

栄養ケア・マネジメントでのSDGs

栄養ケア・マネジメントとは

ヘルスケア・サービスの一環として、対象者の栄養状態を判定し、改善すべき栄養上の問題を解決するために、個々人に最適な栄養ケアを行い、その業務遂行上の機能や方法、さらに手順を効率的に行うためのシステムをいいます(図1)。

図1 栄養ケア・マネジメントの基本的構造

そして、栄養ケア・マネジメントのゴールは、対象者の栄養状態、健康状態を改善してQOLを向上させることにあります。QOLは、Quality Of Life:「生活の質」や「生命の質」と略されます。1946年にWHOが「健康とは、身体的、心理的、社会的に良好で安定した状態であり、単に病気がなかったり病弱でなかったりすることではない」と提唱したことで、生活の質を求めることは、社会的な人間として健康的な生活を送る上で欠かせないもの、とされています。人間のより良い状態を、身体的・精神的ならびに社会的側面からとらえようとするものですので、身体側面からの評価だけでなく、対象者の背景や精神面からの評価も併せて行うことが望まれます。

 

栄養ケア・マネジメントとSDGs

マネジメントは、組織においての「経営管理」を意味していますが、私が経営の研修会や本を読んでいて一番納得できたことは、マネジメントの真の意味は相手のために何ができるかということでした。このことから栄養ケア・マネジメントでは、栄養の知識を使って対象者のためにどのような栄養改善、栄養支援ができるか、医療・福祉分野だけでなく、それぞれの職場(職域ごと)でも活用することができると思います。

令和3年度介護報酬改定では、介護保険施設における栄養ケア・マネジメントの強化を目的に、施設系サービスについては、栄養マネジメント加算は基本サービス費に包括され、状態に応じた栄養管理の計画的な実施が求められるとともに、入所者全員に丁寧な栄養ケアの実施が求められ、入所者の自立支援・重度化防止の取り組みを実施しなくてはなりません。また、通所系サービスでも栄養改善加算で必要に応じて居宅を訪問することができるようになりました。このことで、在宅で暮らしている多くの高齢者が管理栄養士と接点を持つことができるようになり、食事の相談がしやすくなり、施設、通所、在宅での栄養管理のシステムができました。地域で栄養ケア・マネジメントを実施することで、SDGsで代表的なものとして目標3の達成に繋がり、摂食・嚥下機能や認知機能が低下しても、最期まで自分の口から食べる楽しみを得られる支援や可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築に寄与することができます。また、コロナ禍で新しい生活様式になりましたが、管理栄養士が食に関わることで「誰一人取り残さない」持続可能な栄養の支援ができます。

目標3:すべての人に健康と福祉を
・あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する

健康経営でのSDGs

健康経営とは、

会社として社員のこころと身体の健康維持・増進へ取り組む活動です。その結果、社員の安心感や満足度、会社への信頼度が高まり、社外からは、社員を大切にする企業として認知されることで信用力も高まります。経済産業省は以下のように定義しています。

従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことで、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。

 

健康経営とSDGsの繋がり

従業員の健康管理・健康づくりは、医療費を負担するという経費面だけではなく、生産性の向上や従業員の創造性の向上、企業イメージの向上などの効果につなげて、企業におけるリスクマネジメントとしても有効にする活動と考えます。ですので、健康経営に取り組むことは、SDGsの目標3・5・8の達成にに繋がっています。

目標3:すべての人に健康と福祉を
・ヘルスリテラシー向上、感染症予防対策、保健指導、メンタルヘルス対策、喫煙対策、受動喫煙対策など
目標5:ジェンダー平等を実現しよう
・ワークライフバランスの推進、健康増進・生活習慣病予防対策・パワーハラスメントの防止・母性健康管理など
目標8:働きがいも経済成長も
・ワークライフバランスの推進、職場の活性化、両立支援、過重労働対策など

 

健康経営が社内に浸透・定着していくことで、社員が元気に、そして笑顔になることができて、会社の組織活性化に繋がっていきます。その結果、事業を成長させていくことができ、持続可能な企業としての利益を追求するためにも、従業員の健康維持・増進を考えた経営戦略は大切なことと思います。そして、管理栄養士は、皆さま一人一人が豊かな人生を過ごすことが出来るように努めてまいります。

(栄養ケア・ステーション https://www.dietitian.or.jp/carestation/about/

 

 

小林 弘治

社会福祉法人 日本心身障害児協会 島田療育センター 医務部 栄養科 科長

公益財団法人 佐々木研究所附属 杏雲堂病院を経て社会福祉法人 日本心身障害児協会 島田療育センター入職、現在は医務部栄養科科長

公益社団法人 日本栄養士会 理事 公益社団法人 東京都栄養士会 理事
NST専門療法士、暫定臨床栄養代謝専門療法士(小児領域専門療法士)、日本栄養経営実践協会認定栄養経営士

 

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