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食べる人に寄り添う社食
2022.09.09
コラム
投稿者:髙山 源一
食堂運営会社のみなさんにとって、クライアント企業は、客先であり、自分たちの糧の源であり、きっと絶対的なものである存在なのだとクライアント側にいた者としてはいい意味でも悪い意味でも感じるものがあります。
ただ、最近の世の中の流れからは、契約先であっても対等であり、企業間であってもコンプライアンスというものがあり、お客側であっても節度をもって対応することが基本だと思いますので、それを前提に、私がたくさんの食堂運営会社との30年以上のお付き合いの中で感じたこと、勉強したことをお伝えできればと思います。
コロナ禍で、オフィスの社員食堂は減っている一方で工場など生産系の事業所社員食堂は拡充している状況ではありますが、今後、ハイブリッドワークが確立し、オフィスの社員食堂も環境を変化させて増えてくることが予想されます。現実、先日私が参加したオフィスセミナーでも大手企業に勤務されている管理系部署の担当者に「ビル勤務者向けにどのような施設があるビルに入居したいか?」というアンケートの問いに対して、ラウンジ67%、食堂55%、コワーキングスペース51%、ジム22%というデータ(セミナー参加者175人、アンケートに参加した100名強の方のうち)があり、会社に出社した際には、社員間コミュニケーションやお客様などとお会いする場所として社員食堂は高いニーズがあることがわかりました。
今は、まだ我慢のときかもしれませんが、オフィスワーカーの場合、会社に出社するという意味(今までのように出社することが重要だった就業から、目的を持って出社)とリモートワークで自宅や外出先などで働くということが確立すると、よりビルで働く人の社員食堂のニーズは高まります。そのときのために、参考になれば幸いです。
*表は、2022.8.23 株式会社オカムラ・Open Innovation Biotope ”Sea”
三菱地所リアルエステートサービス共催イベント
「東京オフィスマーケットの兆候を見据えたハイブリッドワーク時代の
オフィス戦略とは!」より許可を得て掲載。
家庭では、家族や自分で作った物、買ってきた物を食べる、会社に社員食堂があれば、毎日出勤したら、会社によっては、朝ご飯、昼ご飯、夕ご飯、夜勤があれば夜食、と食事を社内で摂れることになります。喫食する社員さんから見れば、会社の社員のための食堂であって、そこで食事を作って提供してくれる人は、おかあさんであり、おとうさん、ときにはおばあちゃん、おじいちゃんかもしれません。そこでは食堂運営会社とクライアント企業との契約内容などは、あまり関係ありません。食事を作ってくれる人と食べる社員という単純なものになります。だからこそ、信頼関係があってこそのお付き合いが重要かと思います。
私自身、社員食堂について経験が浅い時代は、どうしてもクライアント企業側の立場としての意識が強く、社員からの要望、会社からの指示を食堂運営会社さんにかなり一方的に伝えていたと思います。
その後、何社もの食堂運営会社の方々とお付き合いする中で気づいたのは、「食」は、生まれた場所や環境も違うし、味覚や食べてきた食材も人それぞれで、社員が1000人いれば、1000通りの感性があるということでした。それを「どのように食堂運営会社の方々と共有していくのか」を考えた結果、食堂運営会社の方々と情報交換をしたり社員食堂に展開するために流行の物をお互いプライベート時間に食べたり、ということを頻繁にしておりました。そして、お互い企業人としての建て前はあるものの、本音で話ができるような関係性を築くことができるようになったのです。
クライアント企業の担当者は、大学を出たばかりの新人さんもいれば、食通のベテラン社員さんもいるでしょうし、食堂運営会社も、営業担当者さん、現場の責任者、調理師さん、栄養士さんなども食のプロではあるものの同様でしょう。
そこで、いかにギャップを埋めていくかを考えることが重要になります。食堂運営会社の経営層は利益をどのように上げていくかを考え、反対にクライアント企業は、いかに美味しくてよい物を安価に社員に提供できるかを考えますので、両社の窓口になる担当者は、この間に挟まれて苦労が絶えません(私もそうでした)。実際に喫食する社員からの声もさらに加わるわけですから、そうなったら双方の担当者間の関係が上手くいくわけがありません。
そこで、「食」のプロである皆さんには、食に関することにもっと興味を持って頂き、クライアント企業の担当者や社員さんに向き合って頂ければと思います。
もちろん、「食」に興味があったからこそ、今の会社を希望して働いているのだと思いますが、私の経験から食堂運営会社の方々も日々の業務に忙殺されており、お休みの日は、休息を取ることだけに費やされてしまっている方が多いことがわかっています。
そこで、私の知り得た情報をできるだけ食堂運営会社の方々にお伝えしていました。たとえば「こんなところのこんなものを食べて感想を教えてほしい」とか、食に関するアンテナの張り方(HDDレコーダーに「社食」「食堂」とキーワードを打ち込めば日々の情報番組で取り上げるお店やメニュー、トレンドが入手できるし、街中を歩いていても気になるお店があれば、その場でググってみる等)などを定例会の場で話すなど、「食」への興味・関心を高めるきっかけを持っていただいていました。
なかなか大変なことではありますが、皆さんには、クライアント企業の担当者に色々な食に関することを教育していただけるプロになってお付き合いして欲しいというのが希望なのです。
私には、食堂運営会社の方と、お話ししたような関係が築けた方が数名おり、お互い所属していた会社を退いた後も友人としてお付き合いが「食」を通じて続いております。もちろんその関係性が食堂運営会社にもクライアント企業にも良い影響を与え合っていたわけです。
社員食堂はそのような方を見つける機会を得られる場でもあります。みなさんもクライアント企業とそのようなお付き合いができるとよいのではないでしょうか。
髙山源一(TAKAYAMA GENICHI)
日本ヒューレット・パッカード元総務部長
35 年半の勤務のうち 30 年以上にわたり食堂運営に携わり、15年間総務部長として活躍。 メディアからも多数取材され「社食の神様」の異名を持つ。2021年より社食ドットコムアドバイザーとしても活動中。