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Withコロナにおける食と健康

皆さま、はじめまして。医療法人尚仁会名古屋ステーションクリニック院長の木下と申します。このたび、フジ産業従業員様向けに「予防医療と栄養~予防医学の為に栄養/食事に求められること~」をテーマに、4回にわたりコラムを掲載させていただくことになりました。

わたしは医師なので食に関しては多くの見識は皆さまに比べ持ち合わせておりませんが、医療からみた食と健康のあり方を医師の立場から述べさせていただきたいと思います。

ニューノーマル下において

ご承知の通り、現在新型コロナウイルス感染症で多くの国民が健康に対して一斉に不安を持つようになりました。食のところで言うと、外食産業が苦境に立たされています。この未知のウイルスはまだまだ不明なことが多く、今後感染の再燃や再流行に向き合っていくことが必要ということ、いわゆるニューノーマルという新たな生活様式も取り入れていかなければならないということもわかりました。この影響は日本では1年、米国では2年、世界全体では5~10年かかり、今までとは違う生活スタイルを余儀なくされるだろうと言われています。あくまで予想なのでもっと早く終息するのか、あるいはウイルスの変異により強毒化や感染性が増してさらに拡大するのかまだ実態がつかめないところがありますが、第1波の後にそれ以上の第2波が来たことにより、まだしばらく予断を許さないことは事実として捉えなければなりません。ただ感染対策ばかりでは、国が言うように経済が成り立たないので、今後両立をさせることが必要です。

食でいうと、もう昔のように対面に座ってお話しながら食事することは難しく、会社によっては社内食堂を縮小したり、またソーシャルディスタンスを保ちながら静かに食事を取るこことを義務づけられたりしています。そもそもリモートワークの導入により、会社へ出勤することがなくなり、社内食堂が閉鎖に追い込まれているところもあります。 

コロナ以外での健康への弊害とは?

あまりマスコミでは報じられていませんが、医療の現場で最近言われているのが、コロナばかりに目を向けていると、コロナ以外で落とす命もあるということです。つまりどういうことかというと、この4月から5月にかけて、国の非常事態宣言の発令で国民が行動制限やリモートワーク、巣ごもりを強いられることにより、不規則な食生活、運動不足、過度なストレスで生活習慣病のリスクがかなり高まっています。実際に6月から健康診断が再開されましたが、体重増や高血圧、肝機能異常、脂質異常、糖代謝異常の方が非常に多く見られます、明らかにコロナ禍による何らかの制限が原因です。

また高齢者においては、より顕著です。認知症やサルコペニア、フレイルなど筋力低下を伴う高齢者も多くなっており、さらに子供においては骨折が明らかに増えているとのことです。これも筋力低下が原因です。おそらく数年後には、成人においてはこれらが影響して糖尿病や心筋梗塞、脳梗塞が増え、それに伴う死亡者が増加することが予想されます。

したがって、いまこそ食および栄養管理が必要な時期です。子供から高齢者にかけて正しい食育が大事で、未病・予防に真剣に取り組んでいかないと、それこそコロナで助かっても、生活習慣病で命をなくすこともありえます。

今こそ、栄養管理が最重要

以前から高齢者の増加や医療従事者不足が予想される2025年問題が叫ばれていますが、このコロナと相まってこの問題が前倒しされて、おそらく数年後には大きな社会問題になることも予想されます。マクロでみても、気が付けは国民医療費が国家予算を超えるのも目前の状態で、そのなかで生活習慣病は医療費の3分の1を占めています。

国も特定健診・特定保健指導を全面に対策として打ち出していますが、現在コロナ禍で生活習慣病対策がおろそかになっているのが実態です。国家の課題としても、食に携わる皆さんが真の意味でのエッセンシャルワーカーであることは間違いないです。国民の健康を支える立場であることをなかなか実感することは難しいかもしれませんが、ぜひフジ産業様でも大きな目標として社内全体で掲げ、また社員一人一人が食と健康に関する高い意識を持つことで、このコロナ禍でも会社として十分発展できる可能性はあります。

医療も受診抑制やコロナ対応で大きく落ち込みを見せていますが、多くが使命感を持って前を向いています。

健康の一丁目一番地は、食と運動の生活習慣です

皆さまの役目は非常に重要です。ますは不規則な食生活を改めるよう、生活習慣病対策、筋力低下や免疫力アップなど補う、健康に即した新たな食の啓蒙と再構築が必要です。コロナ禍に合わせ食も大きく変わることが求められています。わたし個人の考えとしては、これからは「食×公衆衛生×IT」という組み合わせが必要です。

先ほども述べたように、食はコロナという公衆衛生の問題を常に考えながら対応していくことになります。公衆衛生といっても幅が広いですが、エッセンシャルワーカーとして、また食を通して間接的に人を接せることから、検温、消毒、健康管理、周知活動、感染対策として栄養管理がまず必要です。

ただ一方向なかたちで食を提供しても本当にそれが健康に結びついているかどうかはわかりません。したがってそこはITを用いることが必要です。個々の健康データからAI解析をかけ、その人にあった最適な食事を出せるようになることが可能な時代になっています。

そういった意味では食が最先端企業になる可能性も秘めていると思います。そのような新しい可能性を秘めている職場であることを意識しながら、どうぞお仕事に励んで下さい。

 

ご覧いただき誠にありがとうございました。次回は「食と医療のコラボレーション」についてお話しさせていただきます。

 

 

木下 水信

医療法人尚仁会
名古屋ステーションクリニック理事長

1993年近畿大学医学部卒業後、近畿大学医学部付属病院、東北労災病院にて外科医としてのキャリアを積み上げ、1995年国立がんセンター中央病院で癌を専門とする外科医として勤務。

1999年名古屋医療センターで主に消化器外科胃癌の内視鏡技術認定という当時数十人にしか日本にいなかった資格を取得。

2007年医療法人尚仁会名古屋ステーションクリニックを健診専門施設として開設。
2010年医療法人尚仁会名古屋ステーションクリニック理事長に就任。

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