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給食室から届ける、元気と笑顔― 28年の給食づくりで大切にしてきたこと ―
2026.09.18
コラム
投稿者:綾部 真弥
「給食を題材にしたドラマを作ってみないか?」
企画プロデューサー永森さんの一言から、この作品は始まりました。
何故、給食だったのか?
当時は昭和を舞台にした、違うドラマの企画を進めていて、
既に脚本も何話か作っていましたが、トラブルに見舞われ頓挫してしまった所でした。
私自身とても楽しみにしていた作品でショックを受けている時に、
冒頭の言葉を掛けられたのです。
永森プロデューサーには、元々、給食をテーマにした作品の企画があり、
それをブラッシュアップすれば、
食モノのドラマが多数ある現在でも、
独自性のある面白いものになるのではという感触があったようで、
中止した企画の、昭和という時代も描いてみようという提案でした。
私は給食よりも、まずは昭和という時代設定に惹かれました。
主人公の教師・甘利田は昭和のスパルタ教師で、
生徒たちからも恐れられている教師だが、
実は、給食が大好きで、給食のために学校に行っていると言っても過言ではない。
しかし、その事は誰にも知られてはいけない秘密として自分自身に戒めている。
そんな甘利田の前に、謎の生徒・神野ゴウが立ちはだかる。
彼もまた給食を愛し、甘利田とは違う斬新なアレンジ給食で対抗していき、
2人の闘いが日々続いていく。
という話の骨子が出来た時には、これは面白くなるのでは?
という期待感が生まれてきて、
小説や漫画原作ではない、オリジナル企画で物語・世界観を作っていく作業に、
失意の中にいた私も創作意欲が湧いてきました。
昭和と現在を比較し、時代性と普遍性を表現できるのでは…。
そして、私と、永森さん、もう一人のドラマ版の監督・田口さんと三人で、
1984年を舞台にした給食ドラマの脚本作りが始まったのです。

まず初めに着手したのが、各話、それぞれ目玉となる給食献立のメニュー選びです。
書籍から調べたり、好きな献立は何かと、様々な人に話を聞く中で、
小・中学校時代の思い出が次第に蘇っていきます。
蓋を開けるのに手こずった瓶牛乳。
余った物を手に入れるためのじゃんけん争奪戦。
友達にちょっかいを出し笑わせようとした事。
楽しみの献立の日はソワソワして朝から高かったテンション。
不思議なことに給食をテーマに人と話すと、
必ず盛り上がる事に気付きました。
うちの学校では、こういうメニューがあったとか、
こんな音楽が放送室から流れていたなど、
思い出話は尽きず、この時に集めたエピソードは、
その後のドラマ作りに活かされていきます。
40代以上の方はこの時代設定を懐かしみ、
現役の給食世代の子供たちは、現在との違いを楽しめる。
さらに70代以上の方でも、私たちの頃は脱脂粉乳で…
と、話が止まらなくなる。
給食とは大袈裟に言えば、
大多数の日本人が経験してきた〝文化〟なのだと理解していきました。
それも、配膳から生徒たちが行うというこの一連の工程は、
外国には無い日本独自の誇れるもので、
作り方によっては、全世代に届くエンターテイメント作品になるという確信が芽生えてきました。
現在、日本の映画・ドラマは、
アニメを除くと家族みんなで安心して観られるものが少なく、
この点においても「おいしい給食」は強みを発揮できるのでは、
という考えも働きました。
第1話は昭和を代表する鯨の竜田揚げに決まり、
続いてミルメーク、ソフト麺…最終回はパンがメインだった給食に、
ついに〝お米〟が登場し、新時代の到来を感じさせるカレーライスで締めくくる。
昭和末期のオールスターメニューを各話配置し、授業参観や身体測定、写生大会など懐かしの学校行事を絡めた脚本は、約半年で完成しました。

主役である甘利田先生を誰に演じてもらうか。
そのキャスティング打ち合わせの中で、制作を取り仕切る岩淵プロデューサーから、
市原隼人くんが良いのでは?という提案をもらいました。
コメディー要素満載の作品ですが、
ただふざけてウケを狙うのではなく、
ストイックで生真面目なイメージの彼が演じてくれれば、
給食を偏愛する時のギャップとで、想像以上に面白くなるのではと思い、
即座にオファーしてもらいました。
決して予算が潤沢にあるわけではなく、
しかも地方のローカル局での放送という小品でもあり、
仕事を受けてくれるか心配もありましたが、
脚本を全て読んでくれた彼からは是非、出演したいという返答がきました。
制作サイドみんなで喜んだのを今でも覚えています。
さて、もう一つの難題はライバル生徒を見つける事とクラスメイトの人選でした。
これに関しては400人近い学生とオーディションで直接会って決めました。
演出の希望として、クラス全体を本物の中学生、それも出来る限り中学1年生で構成したいという強い想いがありました。
日本の映画・ドラマでは、中学生役は高校生の年齢の俳優が演じ、
高校生役なら大学生が演じるというのが一般的でしたが、
あの中学生にしかない、大人と子供の狭間にいる思春期特有の魅力を前面に出すため、
この作品には欠かせない要素でした。
アレンジ給食の達人・神野ゴウという、
掴みどころの無いミステリアスな役を出来る人がいるのか。
最も不安なキャスティングでしたが、
大役を勝ち取った佐藤大志くんと出会った日も忘れられません。
オーディション会場に入ってきた瞬間に、彼に惹きつけられました。
抜群の演技センスがあり、醸し出す雰囲気は神野ゴウそのものでした。
予定にはありませんでしたが、即興で目の前にカレーライスがあると思い、
パントマイムで美味しそうに食べて、私を見て笑って欲しいという要求に対して、
彼はじっくりとカレーを食べ、視線を逸らさず笑った瞬間、
あまりの面白さにゾクっとしたのを今でも覚えています。
神野ゴウは、この子しか考えられない。

撮影に向けた準備の中で、同時にもう一つの動きもありました。
テレビドラマだけでなく劇場版として映画も作ろうというものです。
打ち合わせの際に永森プロデューサーから言われた事で、
給食と映画は似ている。だからこの「おいしい給食」は映画でこそさらに面白くなるはずだという言葉です。
自分なりに解釈すれば、
一人でじっくり食べる食事も美味しいが、みんなで食べる給食はもっと美味しく感じる。
映画も一緒で、一人でテレビ画面やパソコン・スマホで観るのも楽しいが、
映画館でみんなと観ると、さらに面白く感じる。
共に笑い、共に涙するこの空間でこそ、給食の映画を映したい。
こうして劇場版「おいしい給食 Final Battle」の脚本も仕上がり、
キャスティングから、撮影場所の選定、美術、衣裳、ヘアメイクといった準備も整え、
いよいよ我々は撮影へと向かいます。
2019年7月21日、夏休みの始まりとともに、
ドラマと映画の脚本を携えて「おいしい給食」はクランクインしました。

1980年生まれ。ドラマ「みんな!エスパーだよ!-欲望だらけのラブ・ウォーズ-」(15)で監督を務め、映画『人狼ゲーム クレイジーフォックス』(15)で劇場長編映画デビューを果たす。
以後、ドラマ「PTAグランパ!」(17)、「GARO -VERSUS ROAD-」(20)、「声優探偵」(21)「アイのない恋人たち」(24)や、映画『人狼ゲーム インフェルノ』(18)、『ゼニガタ』(18)、『柴公園』(18)、『ピア まちをつなぐもの』(19)、『劇場版 おいしい給食 Final Battle』(20)、『劇場版 おいしい給食 卒業』(22)『劇場版 ねこ物件』(22)『劇場版 おいしい給食 Road to イカメシ』(24)『おいしい給食 炎の修学旅行』(25)など幅広い作風の作品を数多く生み出す。
ドラマ『クラスメイトの女子、全員好きでした』(24)は、第41回 ATP賞テレビグランプリ ドラマ部門で最優秀賞を受賞した。今後の日本映画界においても注目すべき監督の一人である。
給食を題材にしたドラマ『おいしい給食』は、現在までに3シーズンを放送し、
2026年10月より沖縄を舞台とした新シリーズ『おいしい給食season4』が放送予定。
ドラマ「おいしい給食 season4」
テレビ神奈川、TOKYO MX、BS12トゥエルビほかで2026年10月放送スタート
市原隼人主演の笑って泣けて腹が減る 学園食育エンターテインメント!
いざ、南国給食!給食道 は 極寒の函館から、酷暑の沖縄へ
公式HP:https://oishi-kyushoku4.com/
©2026「おいしい給食」製作委員会
