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おいしい給食~ドラマ「おいしい給食」から考える~第2回「映画公開からコロナ禍へ」

給食試食会

学校給食を題材にした作品の撮影にあたり、
最も慎重に準備したのは、やはり給食の内容でした。
事前に試食会を開き、全話のメニューを作り、
時代背景を考慮した上で入れるお皿の形から配置までを試してみて、
最終的にはアルマイト製のトレー・食器で通すことに決めました。
脚本に書かれている給食が美味しそうに見えるか?栄養面は足りているのか?
時代考証は間違っていないか?神野ゴウ(ライバル生徒)のアレンジは実際出来るのか?
といった一つ一つの課題を、フードコーディネーターの松井あゆこさんを中心としたスタッフと
打ち合わせをして、撮影現場が安全かつ円滑に進むよう心掛けました。

その中で最初に私からお願いしたのは、1.25倍〝多く〟というリクエストです。
量・品数としても、色彩としても、リアリティーを尊重しつつ
少しだけ多くしてもらいたいというお願いでした。
見せ場である、甘利田先生がガツガツと食べる時間を確保したいのと、
とにかく見た目をボリューミーに、美味しそうに見せたいという狙いからのこだわりでした。
お昼ご飯をお腹いっぱい食べたいという自分の欲望もあったかもしれません。


 

給食シーンの撮影、そして甘利田ダンス誕生

クランクインして最初のシーンは、
教室内で甘利田と生徒の日常のやりとりから撮影していき、
続いて校門の登下校シーンと順調に進行していきました。
そして、インから3日後にいよいよ給食シーンの撮影に入るのですが、
現場は廃校だったため、家庭科室に新たに冷蔵庫や、調理器具を持ち込み、
大量の調理ができる環境を整え、前日からフードチームが仕込みを行い、
初めての撮影に臨みました。

給食シーンの撮影時には、配膳、校歌斉唱、実食と劇中の流れのまま朝から撮影していきますが、忘れられないのが校歌斉唱シーンです。
今では、お馴染みとなった校歌を歌いながら踊る甘利田先生の芝居ですが、
当初は予定していませんでした。
脚本上は生徒たちが校歌を歌い、日直が「いただきます」の号令をかけ給食の時間が始まるという内容だったのですが、撮影を数日こなして行く中で市原隼人くん演じる甘利田先生の突き抜けたキャラクターがあまりにも面白く、一緒に歌ったらどうなるだろう?という興味が出てきたのです。
予め生徒たちには校歌の歌詞や音源は渡していて、前もって練習もしていたのですが、
市原くんには未確認でした。
撮影当日、直接相談をする事にしました。
スポーツ選手のルーティーンのように甘利田も歌い、
自身の気持ちを昂らせる方が面白いのでは?
思い切って歌い、何ならリズムに乗って身体を動かして欲しいと演出意図を話した所、
快諾してもらい実際に演じてもらうことになりました。
今後の可能性として、大好きな献立の日や、初めて食べるメニューの日は、
リズムの乗り方、歌い方を変えていけば、
様式美として撮る予定のシーンが毎話違うものになり、
観客を飽きさせない仕掛けになるのではという考えも生まれていたのです。
同じような毎日でも少しずつ違うと。

撮影本番では、市原くんが歌の終わりには右手をぶつけるというアイデアを実演して見せてくれました。生徒たちに反応してはダメだと伝えていたものの、カットがかかると現場は大盛り上がりに笑いで包まれたのを覚えています。

後のターニングポイントとして、
第4話の八宝菜の日に、初めて神野ゴウに勝てると確信を持ち、いつにも増して激しく挑発して欲しいという要望に対して、腕をブンブン振り回したり身振り手振りのジェスチャーを音に合わせて即興で演じてくれて、遂に〝甘利田ダンス〟としての形が定着し、この作品を代表する目玉シーンとなっていきました。


 

充実した撮影・編集、遂に完成へ

撮影を続けていくうちに、生徒役の子供たち一人一人の個性も際立ち、
仲も良くなってきて、芝居も格段に上手くなっていきました。
演技とはいえ給食を食べて行く中で、まるで本物のクラスのような雰囲気になったのです。
この作品の初期のキャッチコピーに、「給食とは人生初めての会食」と書かれていましたが、
〝おいしい〟とは、単なる食材、調理方法の問題だけでなく、
いつ、誰と、食べたかが大切なのだと改めて考えさせられました。
他人と食を共にすることにより、コミュニケーション能力も育って行くのだと思います。
給食が持つ多様な力を目の当たりにして、驚いたのを覚えています。

撮影最終日には、助監督の計らいでこの作品オリジナルの卒業証書を作成して、
市原くんから生徒たちに手渡してもらいました。
多くの子供たちが泣いていて、この期間がいかに充実したものだったのか、
私自身も教師になったような気分で眺めていました。
暗いニュースが多い中でも、毎日生命力に溢れた中学生と向かい合っていると、
決して未来は暗いものではなく、希望に溢れているという事に気付かされます。
こうして、初めての給食を題材にしたドラマ・映画の撮影が無事終了したのでした。


 

テレビ放送開始から映画公開、そしてコロナ禍へ

編集や音楽・効果音付けといった仕上げ作業を経て、2019年10月からドラマ放送が始まり、回を重ねるごとに想像以上に反響も増え、この作品の面白さが伝わってとても嬉しい気持ちになりました。本当にやって良かったと。
全10話のドラマ放送を終えて、いよいよ2020年3月から映画「おいしい給食 Final Battle」の公開が決定しました。

公開前月の、2月に行われた完成披露試写会は大盛況で、
この映画は自分としても代表作になるのではないか、ヒットするのではないか、何より一人でも多くの方に観て頂きたいという願いの中、世の中は未曾有の事態を迎える事になりました。
コロナパンデミックです。

公開初日に予定されていた舞台挨拶は中止になり、映画に携わる者として最も大切な日になるはずだった喜びは砕け散りました。
街からは人が消えていき、緊急事態宣言により日本全国の映画館は閉館を余儀なくされました。

世間のあらゆる職種の方が大変だったように、我々、映像業界の人間も仕事を失い、
収入が絶たれて、自らの存在価値と向き合う苦しい状況に追い込まれていきました。
こうして自信作だった映画は、誰にも観られずに上映を終えたのです。
 

忘れられない15人の観客

ようやく緊急事態宣言が終わり、映画館も通常営業出来るようになった時、
都内でまだ「おいしい給食 Final Battle」を上映してくれる劇場があるのを知り、
一観客として観に行ってみようと思いました。
私自身、深夜の工場で梱包作業のアルバイトで糊口を凌ぐ中で、
そのどん底の日々の救いを求めたのだと思います。

映画館は閑散として人もまばらで、
シアターには15人位のお客さんしかおらず、ひっそりとしていました。
全員マスクをしていて、まだ世間はコロナの緊張状態が続いていたのです。
ただよく見ると、色々な年齢層のお客さんがいるのに気付き、眺めてみました。
平日の昼にも関わらず、小学生の子供2人を連れたお母さん。他にも親子で来ている方。
70代位のご夫婦。ネクタイを締めた会社員らしき人。などなど、あらゆる世代の方がそこにいました。
上映が始まり、序盤には子供の笑い声が聞こえました。老夫婦は何やら話し込んでいます。
終盤には、会社員らしき人が鼻を啜って泣いていました。
私は、心が震えました。
誰にも観てもらえず終わったと思った映画を、
自分の全てだと信じて作った映画を、
たった15人かもしれないが、今一緒に劇場で観ている。
興奮ではなく、静かな感動で全身が包まれました。
もう一度、立ち上がるべきではないか。
給食と映画が似ているなら、満席の劇場でみんなで笑い、面白さを共有したい。
その企画当初からの夢を叶えたい。
こうして想いを共にするスタッフ・キャストが再集結して、
我々はseason2へと向かう事に決めたのです。

綾部真弥監督

1980年生まれ。ドラマ「みんな!エスパーだよ!-欲望だらけのラブ・ウォーズ-」(15)で監督を務め、映画『人狼ゲーム クレイジーフォックス』(15)で劇場長編映画デビューを果たす。
以後、ドラマ「PTAグランパ!」(17)、「GARO -VERSUS ROAD-」(20)、「声優探偵」(21)「アイのない恋人たち」(24)や、映画『人狼ゲーム インフェルノ』(18)、『ゼニガタ』(18)、『柴公園』(18)、『ピア まちをつなぐもの』(19)、『劇場版 おいしい給食 Final Battle』(20)、『劇場版 おいしい給食 卒業』(22)『劇場版 ねこ物件』(22)『劇場版 おいしい給食 Road to イカメシ』(24)『おいしい給食 炎の修学旅行』(25)など幅広い作風の作品を数多く生み出す。
ドラマ『クラスメイトの女子、全員好きでした』(24)は、第41回 ATP賞テレビグランプリ ドラマ部門で最優秀賞を受賞した。今後の日本映画界においても注目すべき監督の一人である。
給食を題材にしたドラマ『おいしい給食』は、現在までに3シーズンを放送し、
2026年10月より沖縄を舞台とした新シリーズ『おいしい給食season4』が放送予定。

ドラマ「おいしい給食 season4」
テレビ神奈川、TOKYO MX、BS12トゥエルビほかで2026年10月放送スタート
市原隼人が主演を務める、笑って泣けて腹が減る 学園食育エンターテインメント!
いざ、南国給食!給食道 は 極寒の函館から、酷暑の沖縄へ
公式HP:https://oishi-kyushoku4.com/
©2026「おいしい給食」製作委員会

 

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