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コミュニケーションと向上心

私が勤務する静岡県長泉町は、沼津港が近く、新鮮な魚介類や、休日は2時間待ちが当たり前な有名うなぎ屋さんなどがあり、グルメの町でもあります。富士山を一望出来る日本最長の吊り橋「三島スカイウォーク」という名所があったり、市内各所から富士山の伏流水が湧き出していることから、古くから水の都と呼ばれていたりもします。

箱根や伊豆等の観光地や都心へアクセスも良いため、静岡県内の住みごこちが良い街ランキングで常にトップです。余談ではありますが約50cmの『世界一小さな公園』もあります。

私が働く「介護付有料老人ホーム マ・メゾン花水木 長泉」は202010月に新規オープンしました。高齢者様に朝食、昼食、おやつ、夕食を70食前後365日提供しております。高齢者様への提供の為、常食の他に入居者様の嚥下難易度にあわせて食材を一口大に切ったりプロセッサーをまわし細かく刻んだりトロミをつけミキサー状にして提供するなど、学校給食や産業給食とは違った大変さやおもしろさがありやりがいのある仕事だと感じます。

また、当事業所は、当時ではまだ珍しかった「クックパック」+「再加熱機器」といったニュークックチル方式で運営を開始しました。

運営開始前は、今まで経験した事のないニュークックチル運営だということに加えて、初めての主任業務だったことや、私以外に社員がおらず他従業員は全員パートの皆さんで運営することとなっており、それを聞いた時には、胃に穴が空きそうなくらい緊張と不安でいっぱいでしたが、数カ月が経ち実際に運営してみると、ニュークックチルの効率性と食材の美味しさに驚きました。

まず運営についてですが一つ目に、食材は調理の必要がなく、冷たいまま盛付ができることです。

今までは調理後に熱々の料理を加工・盛付していましたが、冷たい料理を加工・盛付できる事で、煮物等やわらかい食材の煮崩れに対応できたり、速い作業スピードに慣れないパートさんもすぐに適応できるようになったりしました。また朝食の準備について、早朝に準備するのではなく、前日に盛付を行い再加熱機器に入れることで自動加熱されるので、当日は主に主食と汁の調理がメインとなり、今までの早番勤務より出勤時間が30分遅くなりました。朝が苦手な私にはとても助かる運営方法です(笑)

次にクックパックの美味しさについてです。当時、試食する前に「冷凍食材」と聞いており、正直美味しいのかどうか不安でした。ですが、試食した際に、特に煮物などは私が作るより美味しい!?と思うほど柔らかく、味がしっかりと染み込んでいました。私達が運営する前は別の委託業者が調理済み食材を使用して運営しておりましたが、入居者様や施設職員様も今までより美味しくなったと好評を得ることができました。

しかしながら味覚は人によって様々、感じ方が違うのと、地域によっては味付けの好み、特性?みたいなものがあると私は感じます。クックパックもメニューによってはいろいろな意見が出たので、いくら「調理をしなくても良い」と言っても、利用者様に喜んでいただくために、日々試行錯誤の毎日です。

例えば冷菜などメニューにより味が薄いと言われたものは、ドレッシングなどの調味料で少し濃くし、逆に温菜で濃いと言われたものは出汁で薄める等、施設特有の味付けと栄養価を考えながら検討しています。

毎月の給食会議で、施設職員様と入居者様の意見や改善内容を報告し合い、コミュニケーションを取ることで、信頼関係が築け、運営も落ち着いてきた1年半経った頃、少しメニューがマンネリ化してきたという話が浮上しました。たまには違ったメニューを検討できないか相談を受け、クックパックを変えるのではなく洋食メニューに合わせピザトーストやサンドイッチを提供、おやつを手づくり、麺やカレー等を手づくりにし、クックパックではあまり出ない食材や構成にすることで、大変喜んでいただけました。

そしてさらに入居者様・施設職員様に満足していただけるよう、まずは月に1回の「行事食」や「イベント食」も手づくりで提供することにしました。基本的に行事食や変わったメニューは私一人で考えていましたが、数年も経つと新しいアイデアが浮かばず結局マンネリ化してきてしまったので、思いきって他のメンバーに相談することにしました。

心強いメンバーたち

当事業所には、普段家庭で料理をしている主婦はもちろん、板前だった料理人もおり、相談してみると様々な意見が想像以上に出てきました。メニューに悩むことはもちろん解決し、行事や催しに合わせた行事食や特別メニューを皆で考える事で厨房メンバーのコミュニケーションをとる機会が増えたと実感しています。

メンバー間で「次の行事はこんなメニューを出してみたい」など、入居者様の笑顔を思い浮かべながら献立を考えている時間はとても有意義で素敵な時間となっています。

施設様要望ももちろんありますが、もう私達の向上心は止まりません(笑)

行事食だけでなく、去年の年末頃から普段の昼食も月に1回、月に2回、週に1回と人員配置に余裕がある時は手づくりでの提供を増やし、今年の10月からは昼食を全て手づくりで提供することとなりました。また施設様の料理に対する考えとして『見ためが大事』という事もあり、食器を高級陶器に買い替え、彩が寂しい時は現場でアレンジを行い、見栄えもパワーアップしています。

 これから

食べることは生きることの基盤であり、入居者様のほとんどは食事を一番楽しみにしているとよく聞きます。

外出する機会もあまりないので、私達は普段の食事・行事食を通じて季節を感じていただきたいと考えます。

とても大変な作業が多く、辛く感じる事もありますが、入居者様からの「美味しかった」というお声と「笑顔」を見ると全て吹き飛んでしまいます。

入居者様たちの生きる基盤を私たちがつくることができることを誇りに思って、これからもスタッフ一丸となって美味しく安心で安全な食事を提供していきます。

野桜 英梨香(のざくら えりか)

静岡県立がんセンターにてパートとして従事
主な業務は、食事提供・現場調理・献立作成など
その後、社員となり工場事業所・福祉事業所を経て、
2020年よりマ・メゾン花水木に主任として従事
事業所運営管理・スタッフマネジメントなど

 

 

 

 

 

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