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なぜこの仕事を続けているのだろう

「給食のおかげでこんなに大きくなりました!」
卒園していく園児の保護者からの言葉です。
お世辞で言った言葉かもしれませんが、保育園給食に携わる者として、心に響く言葉でした。

保育園給食に携わって13年。
園と共に成長しながら考える、この仕事の楽しみ方について書かせてもらおうと思います。

美味しい給食を作ってダイエット!?

私の勤務する学校法人吹上学園中央たんぽぽ保育園は、埼玉県北部の鴻巣市吹上駅近くに立地する私立の保育園です。
園児は離乳食を含む約100名と職員約20名分の給食を、社員1名とパート2名の常時3名で調理・提供しています。

吹上という地名は、風が砂を吹き上げる地という由来があり、冬は北部赤城山から吹き降ろしてくる風がビュービューと吹き荒れ、とても寒くなります。
足元の冷える厨房は、タイツやレッグウォーマーが大活躍。
夏は、全国歴代一位の最高気温を記録した熊谷市に隣接するということもあり、暑さも厳しくなります。
真夏の厨房は暑さとの戦い。
園庭で水遊びをする子ども達のキャッキャという元気いっぱいの声をBGMに、汗だくになって大鍋をかき混ぜ、給食を作っていればダイエットになってしまうという素晴らしい現場です。

試行錯誤して快感を得る

私がこの園に赴任したのは、まだ保育園が開設されて1年目の年でした。
創立30年の歴史ある幼稚園が新たに保育園を併設し、幼保一体化園としてスタートさせたということで、先生方も保育園運営には手探りの状況でした。
私自身も保育園の勤務は初めてで、先生方と相談し試行錯誤しながら、給食のあるべき姿を作り上げてきました。

20名余りだった園児も年を重ねるごとに増えていきました。
その中で、いかに限られた食器・食缶を使いまわしてそれぞれのメニューに合わせるか。
いかにスチームコンベクションオーブンを有効に使うか。
どうやったら業務時間内に作業を終わらせられるか等、他の保育園を知らないながらに工夫していきました。

日々、どうしたらより良くなるか、どうしたら働きやすくなるのか、どうしたら子ども達が喜んでくれるのかを模索しながらの毎日でした。
それは今現在も続いていることではありますが、年々変化するニーズに対応できるよう鍛えられたなと思います。
これだ!という方法に出会った時は、何とも言えない快感です。

安心して預けられるように

私立の保育園のため、在籍する唯一の栄養士として、私共で献立作成から発注、調理までの全てを担います。
0歳児クラスの離乳食や、アレルギー児の個別対応は直接保護者と面談して対応を決定します。保護者が安心して保育園に預けられるよう一人一人と話をします。
保育園給食において、アレルギー対応は避けては通れない課題です。
自分で判断ができない乳幼児には、周りの大人の注意が不可欠です。
保育園グループ管理担当を中心に作り上げた全園共通のマニュアルと、各園との決められたルールに従い、決して事故が起こらないよう給食を提供します。
食物アレルギーだからと特別視するのではなく、園と協力し徹底した管理を行い、他の子と同様に安心して食事を楽しめる環境を作れるよう配慮することが望ましいのではないかと考えています。
保護者と直接お話しして率直な意見を聞くことで、やる気にもつながります。
食物アレルギーに対する保護者の心配を少しでも軽減できればと努めています。

 

子ども達の笑顔のための献立づくり

献立作成には毎月頭を抱えます。
脳へのカロリー補給に持参したおやつのチョコレートが一気に無くなります。

・旬の食材を取り入れ、季節を感じられるようにする。
→四季がある日本の風土を感じてほしい。
・バリエーション豊かに取り入れる。
→こんなおいしいものがあるんだ!と新しい発見をしてほしい。
・苦手な食材でも慣れていくよう、組み合わせ・味付け・調理法を工夫する。
→苦手なものが食べられた!という自信になってほしい。
・色合い、食感も変化させ、五感で食事を楽しめるようにする。
→おいしそうだな!見た目でもわくわくしてほしい。
・調理員の負担を少しでも軽減できるよう、食材・切り方・調理法を考える。
→作り立ての食事を時間内に提供したい。

頭を悩ませ作成しても、いざ調理してみたら失敗だった献立もよくあります。
よし次こそはと失敗をやる気につなげます。

行事食を取り入れることで、子ども達は伝統的な文化に触れることもできます。
特別献立の日の食缶はいつも空っぽ。
下膳もあっという間です。
苦手な人参だって、星形になっているとニコニコ笑顔で食べてしまいます。
夏は子ども達にとうもろこしの皮むきをやってもらい、実際に触れる事で食への関心を持たせたりもします。
子ども達はお手伝いが大好き。
張り切って皮をむき、誇らしげに給食室まで運んでくれます。
そして、自分たちがむいたとうもろこしが給食に登場すると、笑顔でほおばります。
その笑顔を想像しながら、私もまたチョコレートをほおばるのです。

 

嫌いなものにも挑戦できる工夫

家では食べないのに保育園だと食べるなんてこともよくあります。
大好きな先生やお友達と一緒に食べるという環境によるものも大きいですが、調理も一工夫しています。

「家ではカレーを食べてくれないのですが、給食のカレーはどうやって作っているのですか?」と聞かれたことがありました。
保育園のカレーはルーから手づくりしているところも多いです。
うちの園ではキッズカレールーを使用していますが、それでも塩味が強いので牛乳を加えてマイルドにさせています。
「早速、家でも試してみます!」とお子さんの手をとり、帰っていきました。

ピーマンの苦みは、油を加えて下茹でしてから調理することで軽減させます。
栄養素は減ってしまいますが、ピーマンが食べられた!という経験を積むことで苦手意識が無くなればという思いがあります。

骨があるから魚が苦手、なんてこともあるかもしれません。
小さい子ども達ですから危険を回避するためもありますが、魚の骨は下処理でしっかりと取り除きます。

食事を作る人の好みで家庭の食事も決まります。
お母さんが嫌いな食材は食卓に上がらない、という家庭も多いかもしれません。
家庭では出てこない食材・メニューを体験することができるのも給食の良いところです。
私の苦手な食材といえば、カキ。
給食では絶対に使いませんね。良かった!

忙しい両親にとって給食は心の支え

働くお母さん・お父さんにとって給食はとても大きなよりどころだと思います。
実際私がそうでした。
朝、バタバタしながらご飯を食べさせ、保育園へ連れていく。
ご機嫌に食べてくれる日はいいのですが、イヤイヤ期の頃なんて着替えもろくにさせてもらえない。
帰ったら、遊び相手をしながら夕食を作って、食べさせて、お風呂に入れて、寝かしつけて、一緒に寝てしまう。
そして翌朝、またバタバタと支度をする。
恥ずかしながら、我が子の保育園登園時代はこんな生活を送っていました。

保育園へ預けるお母さんは、似たような方も多いのではないでしょうか。
家での食事が大事なのは十分わかっていても、実際なかなか食べさせられない事もあります。
そんな時の給食は心の支えにもなります。
給食でしっかり食べられるから少しぐらい手を抜いてもいいかな?と忙しい毎日にちょっとしたゆとりが生まれることで誰かの支えになっているかと思うと、誇らしく思えます。
給食で人気の簡単メニューの紹介も、少しでも家庭での食事の役に立てばとの思いから始めました。

感謝の気持ちで

保育園給食は、子ども達の著しい発達を支える栄養源であり、よりよい食習慣を形成する基礎となります。
もちろん栄養バランスが良い献立を作ることは大前提ですが、子ども達が食そのものに対して興味を持てるように促すことも保育園給食の役割だと考えています。
食育への取り組みは園によってさまざまだと思いますが、たくさんのことに興味を持ち、ものすごい速度で成長していくこの時期の子ども達と、食育という形で携われるということに感謝しながら、明日もまた、給食のおばちゃんを頑張ろうと思います。

まとまりのない文章でしたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
これを読んだ方が、保育園栄養士の仕事に少しでも興味を持って頂けたら嬉しく思います。

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